学生寮篇 その一 『学ランのあいつ』
補欠合格のおかげで、とりあえず大学一回生となった私の住みかは『学生寮』でした。
新宿から小田急線・急行で約30分。向ヶ丘遊園駅下車、徒歩約20分の山頂にあります。
『コ』の字型につながった、4階建・鉄筋コンクリートの古びた学生寮に約250名の寮生。
一回生が半数を占め、上級生になるほど人数は減っていきますが、上下関係は厳しかった。
三食昼寝つき。と、までは参りませんが、食事の心配はありませんし、何より寮費が安い。
そして一番気に入ったところは、仲間たちとの出会いです。
北は北海道から南は九州まで、全国から集った十人十色の男たちがいた。
寮生に女子は居ないんです。
いるのは、すきっ腹を満たしてくださる食堂のおばさまのみなさんと、
寮生のマドンナ「栄養士さん」。彼女については、これ以上はノ-コメントに、しよっかな。。。
親父から買ってもらったトランジスタラジオから、『FEN』がはっきりと聴けました。
故郷(くに)で聴いていた♪Far East Network♪の何倍もの迫力で。
英語の勉強は教科書に辞書ではなく、ラジオから!!(笑)
イカす音楽に生の英会話。これはもう最高です。
ちなみに、現在は『AFN( American Forces Network)』に変わっていますね。
硬式野球、ゴルフ、アイススケ-ト、剣道などの体育会系の強い大学ということもあり、
寮生の中にも噂のやつらが、ちらほらいました。
学ラン(詰襟学生服)が普段着だからすぐわかる。
同学年、同学部、同学科。そして、同寮生。
いつも学ラン姿の「あいつ」も、体育会のやつだと思っていたけど違った。
”大学生は学生、学生は学ラン。社会人はサラリ-マン、サラリ-マンは背広”
サラッと言ってのける。
”九州男子は男やもん。理屈じゃなか”
多少の抵抗はあったものの、田舎っぺ大将の「そいつ」が憎めない。
四角い顔に細い目をした『フ-テンの寅さん』そっくりな「そいつ」が。