学生寮篇 その四 『ギタ-』
あの当時、フォ-クソングは大変なブ-ムでした。
同学年、同学部、同学科、同寮生の奥田とは腐れ縁みたいなもの。
お互いの恥部を弱さをさらけ出し、酒も浴びるほど飲んだ我が良き友の一人です。
同学年、異学部、異学科、そして同寮生。
私のギタ-先生とも呼べる我が良き友に、梶がいます。
バイト先の「平塚競輪場」で、警備員同士。
軽く敬礼を交わして右と左。ひと呼吸あって、
”よおっ”
”おおっ”
どこかで見かけたやつ。やはり。寮生だった。
そんな梶は、高校時代は柔道をやっていたそうな。
相撲を取った時、締まった体の筋肉ははち切れそうに弾んでいて、
あっという間に投げ飛ばされると直感した。
が、引き分けた。
やさしいな、こいつ・・・
寮室二人部屋に居た私のところへ、例の平塚競輪場以来よくやってきたよな。
同部屋の先輩が外泊する時は、
城達也「ジェットストリーム」をBGMに、ひそひそ、青い春の話に花が咲いた。笑った。
どちらが早く卒業する。賭けをする。二万でどうだ。相場かな。
お互い、童貞であった。
ふしくれだった指先が、かろやかに踊る。
優しく烈しく、女(ひと)を愛する。
スペインの情熱。
『禁じられた遊び』を目の前で弾いてくれた。
「クラシックはこれしか弾けねんだ。楽譜、見てよお。苦労したぜ」
健康そうな白い歯を見せて照れくさく、梶は笑った。
それから、
私はギタ-の虜に。
年の暮れ、アルバイトをして憧れのギタ-を手に入れた。