学生寮篇 その五 『レッスン』
梶、お好みの曲。ほんの一例です。
加山雄三「君といつまでも」「旅人よ」
ジロ-ズ「戦争を知らない子供たち」
五つの赤い風船「遠い世界に」
サイモン&ガ-ファンクル「サウンド オブ サイレンス」「ミセスロビンソン」「ボクサー」
はしだのりひことシューベルツ「風」「花嫁」
吉田拓郎「今日までそして明日から」
ビ-トルズ「イエスタデイ」
モンキーズ「デイドリ-ムビリ-バ-」etc.
いつものように
仲間から借りてきたガットギタ-で、梶が歌い弾いた。
小気味よいピッキングは指(爪)先を絃に直にあてる。
上から下、下から上。こすり、たたき、きざむ。
手首を上下に利かせ、ときに円を描く。
気ままな動き。感性の響き。
つぶれた感のハスキーボイスは、自在に
大きく、小さく。
強く、弱く、優しく、激しく。
感情をこめ、また、突き放す。
ギタ-が鳴いている。
躰ぜんたいで歌い踊っている。
私も、自分のギタ-を抱えながら歌っていた。
眼は、梶の両手にすべて注がれていた。
千葉県は東部にある、九十九里浜近郊の漁師町。
梶は、そこで生まれ育った。
気は優しくて力持ち。
私も、二三度遊びに行ったことがありますが、
梶という男の、根っこを見た気がします。
1971年(昭和46年)の秋頃から始まったギタ-レッスン。
コ-ドを押さえるコツや、ピッキング奏法のテクなど、毎日のように教えてくれた。
アルペジオとスリ-フィンガ-は難しかったなあ。
下手くそな私を少しもけなさず、褒めに褒め、褒めたおしてくれた。
クラシックの『禁じられた遊び』の方は
楽譜を買って、自分なりに少しずつ弾けるようになりました。
もちろん、梶のアドバイス付きですが。
面倒見のいい気のいい奴なんですよ。^^
1972年(昭和47年)1月。
その曲は、ラジオから飛び込んできました。
吉田拓郎「結婚しようよ」